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小さくて広いところ

 

 バイトをしていて思うのは、どの空間に行っても、人の悪口を言う人はいるんだなあということ。そういう人って自分で勝手に自分のハードルを上げていて、それを人にも求めている。それ自分がつらいだけだからやめなよ、というか自分に完璧を求めてかつ他人にも完璧を求めるって、それいったい何を求めているんだろう、ならこんな小さい環境にいないでもっとそういう人たちが集まる一流企業とかに行けばいい。1に1かけたって永遠に桁は上がらない。風通しの悪い空間は嫌いで嫌いで、高校にいたときもちょっと偏差値が高いからって進学する大学の話ばかりが持ち上がるのがすごい嫌になった。多分そこで敵を高校にしないで何とかして気が合いそうな人を見つける努力をすればよかったんだけれど、高校が敵なら全生徒が敵みたいに思えてきちゃって、今思えば私の頭も狭かった。

 ぼくの地球を守ってという漫画の、コミックの余白の著者コメント欄に、「地面に足をつけて、両手をお空に広げて」っていう言葉がある。多分生き方としてはそれが理想で、高校時代の自分は地に足もついてないし腕組みしてじっとしていたんだな、と思う。まず地に足を、まずはそれからだ。じゃないとどんな場所に流されてしまうかわからない。同じ場所にじっとしていると、人に新しい何かとかストレスのはけ口を求めてしまうけど、人じゃなくてものに向かえたらいいのに。だから博士か職人になりたい。

 この間、グランフロント梅田でやっていた、「漫画、9番目の芸術」展を見てきた。グランフロント梅田という梅田駅からすぐの建物で、なんとなくショッピングモールだと思っていたんだけれど、入った瞬間空間の異質さにくらくらした。大丸とか高島屋みたいな百貨店でも入った瞬間に、金の動くエネルギーの圧力に疲れてしまうんだけれど、それとはまた別だった。ふんだんに金が動いている、かつ知がうごめいているというか、インテリジェンスの知じゃなくて、資本主義社会における知というか、あの空間はすごかった。建物の真ん中がホールになっていて、ちょっと休める椅子がいくつかおいてあるんだけれど、あまりにくらくらしたからそこにへたり込んでアーモンドチョコレートをむしゃむしゃむさぼった。しばらく放心状態でチョコを食べていて、ふと意識が現実に戻ったらすぐ後ろで企業の研修会みたいなのが始まっていて、大量のスーツ姿の学生たちがいた。絶対見られてた。2mくらいの距離だった。これだから、ほんとにこれだから。動物園の猿か、私は。なんかちょっとそれがあまりに決定的で、こういう空間に結局私は馴染めないのか、とつくづく思った。

 でそれからこのまま展覧会行く元気がなかったから、昼はワッフルとか食べていたんだけれど、建物のなかのカフェでカレーを食べた。そのカフェも8種野菜のサラダランチとかなんとかかんとかのジェノベーゼみたいな、つるっとしたキレイなメニューがあったんだけどそんなもん食べても滋養にはならないからカレーにした。生野菜って毎日毎日たくさん食べるものではないと思っている。胃が疲れる。精をつけたいと思っているときはやっぱり力強いものがいい。そしたら偶然にもそのカフェが大日本製紙(働いている本屋の親会社)が協力しているカフェだった。こんな洒落たこともしているんだ。ふーん。長机には各席にタブレットが設置されていて、いかにもビジネスマンなスーツ男性がマックをパチパチしていた。デザイナー系のnumeroだかfudgeだかそういう系の服の女の人とか、果ては長身アメリカ男性二人組とか、とにかくそんな23区のスタバからいい感じにそういう都会的でグローバルな人たちを厳選して寄せ集めました、とでもいいたげな空間だった。多分世の中を背負っているってこういうことなんだろう。常に進むこと。下を見ないこと。社会の流れに追いつきたいなら下層を相手にしてはいけない。エリート思想は大事。高校の同級で、東大に行ったのはそういう人たちだった。自然にエリートの位置に落ちつける人。でもそういう人たちは嫌いじゃない。ちょっとでもそこになじめない人は別の国立か医学部、落ちて私立に行ったようにみえる。むしろ苦手なのはそっちの人たちに多いけどその話は割愛。

 

 話を「漫画、9番目の芸術」展に戻す。すごい疲労感だったから見て回れるか不安だったけれど、入った瞬間ふわっと体が軽くなるくらい楽しい展覧会だった。そもそも9番目って言ってもじゃあ8番目まではなんなの、って話で、流石はルーヴル美術館の展覧会。そこはきちんと解説があった。

 

 

 

※フランスにおける芸術の序列。第1から8までは順に「建築」「彫刻」「絵画」「音楽」「文学(詩)」「演劇」「映画」「メディア芸術」とされる(諸説あり)。   

公式HPより。

 フランスでは漫画は日本のようにコミックで安いものではなくて、 バンド・デシネといって、写真集みたいな大きさと値段のアートブック的なものとして売られているらしい。だからエンターテイメントよりも文学色が強くて、それはそれで見ていてかなり面白かった。主にフランスと日本人の作家の、ルーヴル美術館をテーマにした特別漫画の一部が展示されていて、内装も漫画に合わせてデザインが変わっていてわくわくした。フランスの作家の漫画は、絵と文学の融合というか、絵のもつ脳にダイレクトに訴えかける抽象的な強さと、文学が書く重々しくも避けようがない人間の業を上手く一つにしていて、新鮮ですごいよかった。映画に近いけれど映画とはやっぱり違う。やっぱり漫画は漫画で、すぐ近くにある感じがする。音楽と絵と違って文学だけは人を選ぶというか門が狭いというか、閉鎖的で万人受けはしないところがあるけれど、漫画は文学性を持ちつつも大衆に開かれていていい。芸術は大衆に開かれていなければならないと思う。時々これは昏さを抱えすぎてはいませんか、みたいな作家もいて、もはや漫画ではなくて変な絵で、なんか怖くなってそこは素通りした。これは確かにアートブックとして読む重さだ。気に行った作家の漫画を全部通して読んでみたくなって、売店でそれも売ってたけれど、フランス語全然わからないからやめた。美術館の売店で気にいった絵の絵ハガキを買うのがすごく好きなんだけれど、この展覧会のグッズ製作者の絵ハガキのセンスは悪くてあんまりいいやつ買えなかった。まだ既存の作家の絵が多いから権利もろもろ難しくて作るのが難しいのかもしれないけど、なんでここのシーン絵ハガキにしたの?っていうのが多かった。ちょっと残念。

 

www.gengaten.info